追い切り評価の結果はいかに?
出走15頭中、追い切り動画で確認できた14頭のうち高評価としたのは5頭。うち、高評価馬が1.2着。人気馬だったとは言え、ダノンザキッドに関しては1週前追い切り評価でも【A】評価としており少しは参考になった人がいたかも知れない。
着順 | 馬名 | 評価 | 人気 |
---|---|---|---|
1 | ダノンザキッド | B+ | 1 |
2 | オーソクレース | B+ | 3 |
3 | ヨーホーレイク | B- | 4 |
4 | タイトルホルダー | B+ | 7 |
5 | シュヴァリエローズ | B | 5 |
6 | テンカハル | B- | 13 |
7 | アオイショー | A | 8 |
8 | マカオンドール | B+ | 9 |
9 | ヴィゴーレ | B | 11 |
10 | アドマイヤザーゲ | B | 6 |
11 | ホールシバン | B | 12 |
12 | バシニングポイント | B- | 10 |
13 | セイハロートゥーユー | - | 14 |
14 | モリデンアロー | C | 15 |
止 | ランドオブリバティ | B | 2 |
レース回顧
勝ち時計は2:02.8秒。ホープフルSがG1に昇格してから過去3年における平均勝ち時計は2:01.5秒であり、単純に比較すると1.3秒遅い。
ただ今年の中山の馬場は時計のかかる馬場。
距離は違うが、この日の中山7R(芝2200m 1勝クラス)と中山12R(芝2500m 3勝クラス)においても過去の平均勝ち時計よりも時計を要していた。
中山7R (芝2200m) | 中山12R (芝2500m) | |
---|---|---|
2020年 | 2:17.6秒 | 2:37.4秒 |
過去平均 | 2:14.9秒 | 2:34.1秒 |
比較結果 | 今年の方が 2.7秒遅い | 今年の方が 3.3秒遅い |
(注)中山7Rは過去2年分、中山12Rは過去3年分の平均値としている。
この馬場レベルを考慮すると、2:02.8秒の勝ち時計は悪くなく、例年並み、いや寧ろ良い方かも知れないと言えるのではないだろうか。
ペースは、前半1000mが1:01.9秒、後半1000mが1:00.9秒。後半が1.0秒早い、ややスローペースでレースが行われた。
このペースを作ったのは、ランドオブリバティ(三浦)であった。
パドック
この日はパドックをリアルタイムで確認し、Twitterで以下のようにつぶやいていた。文字数もあり詳細までは伝えることができなかったが、ダノンザキッドは少しハミ受けが悪かったのだろうか、口をパクパクし、アタマを振り、舌を出す仕草を見せていた。とは言え、516㎏の雄大な馬体を柔らかく使えており、後肢をしっかり前に運び、力強く歩けていた。
展開
10番ダノンザキッドが好スタート。その外の11番タイトルホルダーのテンの脚が早くこの馬がハナに立つかと思いきや、内から3番ランドオブリバティ。
スタート直後、2番ヨーホーレイクが左にヨレ、ランドオブリバティと馬体が接触。これもありランドオブリバティが押し出されるように先頭に立つ形に。
1角進入時点での隊列は、
(1列目)3番ランドオブリバティ
(2列目)1番オーソクレース、11番タイトルホルダー
(3列目)4番ヴィゴーレ、6番ホールシバン、10番ダノンザキッド
(4列目)5番テンカハル、12番アドマイヤザーゲ
(5列目)2番ヨーホーレイク、13番シュヴァリエローズ、8番バシニングポイント
ここまでの11頭が固まって1角を曲がることに。
7番マカオンドール、9番アオイショー、14番モリデンアロー、15番セイハロートゥーユーは、この集団から3~5馬身離れた後方からの競馬となった。
やはり枠順は重要。4番ヴィゴーレ、6番ホールシバン、5番テンカハルなどが楽に好位の良いポジションを取れているのに対して、10番ダノンザキッド、12番アドマイヤザーゲ、13番シュヴァリエローズなどは馬群が凝縮していたこともあり、かなり外を回らされることに。
8番バニシングポイントは、1角手前で前に壁を作り落ち着かせようとしたが、馬がそれを嫌がり、アンコントローラブルに。1角~2角で大きく外を回り、向こう正面ではダノンザキッド、タイトルホルダーの前に入り、先頭に並び掛けることとなった。
向こう正面での隊列は、
(1列目)3番ランドオブリバティ、8番バニシングポイント
(2列目)1番オーソクレース、11番タイトルホルダー
(2.5列目)10番ダノンザキッド
(3列目)4番ヴィゴーレ、8番ホールシバン、12番アドマイヤザーゲ
(4列目)2番ヨーホーレイク、13番シュヴァリエローズ
(5列目)5番テンカハル、9番アオイショー
川田騎乗のダノンザキッドは、外から被されることが無いように細心の注意を張りながら終始外目の2.5列目(タイトルホルダーの外斜め後ろ)を追走していた。
3角と4角の中間地点手前のラスト3Fから各馬追い出しを開始。

ダノンザキッド川田騎手の手はこの時点から激しく動いており、見ている人を不安にさせた。なぜなら逃げている1番人気のランドオブリバティの手応えが良く見えたためだ。この直後に驚く事件が起こるが、この時点では筆者もダノンザキッドの手応えに不安に感じていた。
この時点で追い出しを開始していなかったのは、逃げた3番ランドオブリバティ、内の4番ヴィゴーレ、2番ヨーホーレイクくらいであった。
勝負どころの最終コーナーで驚くべき事件が発生する。
先頭を走るランドオブリバティが逸走してしまったのだ。
レースVTRを確認したところ、4角をもの凄いスピードで曲がっており、鞍上がスピードをコントロールできていない状態に見えた。
4角を曲がりきらない状態で馬が手前を替えたことが直接的な原因に思えるが、それ以上のことは分からない。結果的に逸走してしまったというのが事実である。
鞍上の三浦騎手は逸走してからも懸命に右手綱をひき、進路を修正しようとしていたが、全く制御不能な状況であった。
この件についての是々非々については言及は避けるが、4角での手応えも良く、もしまともに走っていれば…。ダノンザキッドが勝てていたか…。と思わせる能力を感じた。
三浦騎手をはじめ、馬の状態は気がかりで、この後どう立て直してくるかは興味深い。この馬の強さはベールに隠されることとなったが、もしかしたら末恐ろしい能力の持ち主かも知れない。
話をレースに戻す。
直線坂下時点で、マカオンドール、オーソクレース、タイトルホルダー、ダノンザキッドが横1線。
そこからダノンザキッドとオーソクレースの2頭が抜け出し、ダノンザキッドの方が一旦は半馬身前に出るも、オーソクレースもそこから食い下がり、坂を駆け上がりながらダノンザキッドに並び掛ける。
ここからのダノンザキッドが強い。
オーソクレース並び掛けられた後も、川田騎手の懸命の追いに応え、力強く伸びて、最後は1馬身1/4差突き放して先頭でゴールした。
1着 ダノンザキッドについて
兎にも角にもダノンザキッド。
勝つには勝ったが走りが荒削り。スタートから最初の1000m地点まで右手前。そこから残り300m地点まで左手前。残り300m~ゴールまで右手前。
すなわち3角~4角のコーナーをずっと逆手前で走り、最後の直線も逆手前だったこととなる。
単純計算すると、2000mのうち、1300mを右手前で走り、700mを左手前で走ったこととなる。しかも左手前で走った700mは本来右手前で走る右回りのコーナーリング部分。何とも不器用な馬だ。
それでいて上り3F時計は最速タイの36.4秒。
参考までに上り3F順位の表を掲載しておく。
3F順 | 3F時計 | 馬名 | 着順 | |
1 | 36.4 | B+ | ダノンザキッド | 1 |
1 | 36.4 | B- | ヨーホーレイク | 3 |
1 | 36.4 | A | アオイショー | 7 |
1 | 36.4 | B+ | マカオンドール | 8 |
5 | 36.5 | B | シュヴァリエローズ | 5 |
5 | 36.5 | B- | テンカハル | 6 |
7 | 36.7 | B+ | オーソクレース | 2 |
8 | 37.0 | B+ | タイトルホルダー | 4 |
9 | 37.8 | B | ヴィゴーレ | 9 |
10 | 37.9 | B | アドマイヤザーゲ | 10 |
11 | 38.0 | - | セイハロートゥーユー | 13 |
12 | 38.2 | B | ホールシバン | 11 |
13 | 39.3 | B- | バシニングポイント | 12 |
14 | 39.6 | C | モリデンアロー | 14 |
15 | 止 | B | ランドオブリバティ | 止 |
上り3F順位1~8位までは展開とポジション取りの差がそのまま表れていると思われ、7.8着に敗れたアオイショー、マカオンドールについても弱い馬ではないだろう。
2着 オーソクレースについて
1枠1番を最高に活かしたルメール騎手の好騎乗。
ラスト150mで脚が止まってしまったが、枠順のアドバンテージで3着ヨーホーレイクに1/2差を付けての2着。
枠順が変われば、2着に粘れていたかどうかは分からない。
3着 ヨーホーレイクについて
スタートでの不利がありながらよく3着まで持ってきたなというのが正直な印象。
スタートであの不利がありながら、後方に下げず、先行集団を追走した武豊騎手の好騎乗が光った。
4角時点でももっとも手応えのあった1頭で、スタートの不利を考えるとオーソクレースより上の評価を与えても良いかも知れない。
4着 タイトルホルダーについて
スタートのダッシュ力があり、掛かり気味のランドオブリバティがいなければハナを奪えていたかも知れない馬。
3着ヨーホーレイクとは、1馬身1/2差(0.2秒)を付けられたが、最後まで見せ場たっぷり。戸崎騎手も最高の騎乗をしていた。
ハナを奪い自分のペースで進められていれば、3着に粘れていたかも知れないが、上り3F時計は37.0秒(8位)とG1クラスとなると、最後に少し足りない点も露呈した。今後の成長に期待したい。
5着 シュヴァリエローズについて
このレースで高く評価したい馬の1頭。
1角~最終コーナーまで走ったコースは終始外目。外目といってもかなり外を回っており、上り3F時計は2位の36.5秒。
勝ち馬と0.6秒差(3馬身1/4)の5着だったとは言え高く評価したい1頭。
この馬は、オーソクレースとともにキャロットクラブのクラブ馬。このレースを回顧する限り、既に重賞をいくつか取ってくれそうな能力の片鱗を見せていた。
出資している一口馬主の方も決して悲観はしていないだろう。よく頑張った。
次走狙い馬:シュヴァリエローズ
6着 テンカハルについて
序盤から内枠を活かし内目を追走。5着シュヴァリエローズとは着差以上に実力差があるかも知れない。ただ上り3F時計36.5秒は勝ち馬と0.1秒しか変わらない優秀な時計。序盤の位置取りが最後まで響いたという評価となる。
7着 アオイショーについて
上り3F時計はダノンザキッドと並び最速タイ。最後の直線も大外を回し伸びている。最序盤もう少しレースに参加してくれていれば…。決して弱い馬ではなく、次走も人気しそうだが、オッズ次第で狙ってみたい。
次走狙い馬:アオイショー
8着 マカオンドールについて
この馬も、上り3F時計はダノンザキッドと並んで最速タイ。序盤~中盤の追走力は、このクラスになると現状少し物足りないか…。最終コーナーで内を突いたこの馬と、外を回したアオイショーとでは、アオイショーの方が上かも知れない。



ただ内は馬場が痛んでおり、これを考えるとアオイショーとは五分という評価で良いとうい考え方もあるかも知れないですね。
最後に
ダノンザキッドは、荒削りな走りで終始外を回し力で捻じ伏せる形での勝利であり、見た目以上に他馬とは能力差があるという見立て。個人的には今年のダービー馬候補の筆頭に思っている。
ただ、課題は山積み。まずクラシック初戦の皐月賞。現状右手前に勝る走法で、最終コーナーで逆手前となっていた点は大きな課題の一つだろう。克服して無敗のダービー馬を目指し、川田騎手とともに頑張ってほしい。
また、この記事執筆時点でランドオブリバティに関するニュースは流れていないが、この馬の未知の能力についても注目しておきたい。