本記事は、2025年11月2日(日)に東京競馬場で行われる『天皇賞・秋(G1)芝2000m(定量)』の最終追い切り評価記事です。
出走馬は14頭。追い切り動画で確認できた全頭の追い切り評価となります。
出走馬について、枠番順にコメントします。
コスモキュランダ 58.0 【B】
1週前は美浦南Wで3頭併せの内。直線で早めに抜け出すと、懸命に追って迫る相手を引きつけながら突き放す好内容でした。
最終追いでは手前替えも流麗で、最後まで高い集中力を保ちながら伸び切り、併せた相手に2馬身先着。常に“ゲートの出が悪い”という課題を抱える馬ですが、今回はチークピーシーズを着用しており、スタートへの集中力を高める意図が見て取れます。
出遅れて勝てるほど、この舞台は甘くありませんが、長く脚を使える持続力と勝負根性は大きな魅力。全く人気はありませんが、一発を秘めた仕上がりと言えるでしょう。
アーバンシック 58.0 【B+】
1週前は気負い気味とも取れる活気を見せつつ、骨格の大きさとストライドの伸びが噛み合い、素質の“器”を感じさせる動き。ただ、相手の前に出てから気を抜き、鞍上がステッキで促す場面もありました。
最終追い切りでは、フランスのアレクシス・プーシャン騎手(25)と初コンタクト。1週前の熱をうまく制御し、程よい緊張感を保ちながら集中力の高い走りを披露。いっぱいに追う古馬3勝クラスを寄せ付けず、半馬身先着を果たしました。
プーシャン騎手は若手ながら落ち着き払った騎乗ぶりで、馬の気持ちを読み取りながらリズムを整えるセンスが光ります。冷静さと感性を兼ね備えたこの騎手なら、アーバンシックの潜在能力を存分に引き出せそうです。
ジャスティンパレス 58.0 【B-】
1週前は浮遊感のあるフットワークで、クビの使い方やフォームのバランスは上々。ただ、鞍上としてはもう一段上の弾けを期待していたのでしょう。届かず中の相手に1馬身遅れました。やや線が細く映った点も気になります。
最終追いは、一時期は坂路中心で行っていたものを、今年に入り再びCWに戻しての追い切りを継続。調整程度の内容ではあったものの、後肢の引きつけが弱く、持ち味である俊敏さと弾力性にやや欠けました。このあたりは年齢的な影響もあるのかもしれません。
全体として上質な動きは維持しているものの、かつての迫力にはもう一歩。評価は一段下げました。
ソールオリエンス 58.0 【B-】
2週続けてマスカレードボールとの併せ馬。1週前は相手を前に見ながら折り合い重視の内容で、最終追いでは自身初となる坂路での追い切りに挑みました。いずれもマスカレードボールに合わせた調整でしたが、動きそのものはソールオリエンスの方が僅かに上に映ります。
最終追いの坂路が実質の本追い切り。相手を追走しつつ、互いに抜きつ抜かれつの攻防を繰り広げ、最後は鼻面を揃えてきっちり併入しました。
初の坂路調整で前向きさと勝負根性をしっかり引き出せた点は大きな収穫。近走のもどかしさを払拭する内容で、GⅠの舞台でも巻き返しが期待できそうです。
タスティエーラ 58.0 【C】
1週前は美浦南Wで2頭併せの内。肌艶こそ良く活気も見られましたが、手前を替えず左手前一本の走りで、動きの連動性を欠きました。外の相手に何とか先着したものの、時計のわりに内容は平凡。評価を上げるには至りません。
最終追いではD.レーン騎手が跨り、美浦南Wでの併せ馬。序盤は勢いよく進み、直線では1馬身差まで詰め寄りましたが、右手前に替わってから動きが噛み合わず、伸びを欠いてしまいました。最後は相手に追いつけないと判断したように自ら走るのをやめ、レーン騎手が懸命に手綱を扱いても反応は薄め。
全体的に集中力を欠く印象で、心身のバランスがまだ整っていません。GⅠの舞台ではやや不安を残す仕上がりです。
ブレイディヴェーグ 56.0 【A】
四肢の回転が滑らかで、前後左右の連動が美しい“華麗なフットワーク”。矢のように鋭い伸びでありながら、動き全体に品が漂います。程良く気持ちも乗っており、活気の中に落ち着きがある点も好感です。
最終追い切りでは直線で手前を替えると、馬自らギアチェンジして終い1Fは驚異の11.0秒。これを馬なりで計時しており、状態の良さは疑いようがありません。
戸崎騎手にとって天皇賞・秋制覇は悲願のタイトル。その実現が、いよいよ現実味を帯びてきました。
マスカレードボール 56.0 【B-】
弾むようなフットワークがこの馬の持ち味。ただ、1週前は動きにまとまりを欠き、終いの伸びももうひとつでした。
最終追いの坂路では、ソールオリエンスに刺激されて勝負根性を見せ、時計こそ出たものの、動きに余裕がなく、持ち味の“弾むような走り”が影を潜めています。
現在、堂々の1番人気に推されていますが、追い切りの内容からは正直、不安を覚える仕上がり。個人的には、やや過剰人気の印象を受けます。
ホウオウビスケッツ 58.0 【B-】
1週前はクビを上手に使い、仕掛けへの反応も悪くありませんでしたが、いつもよりややフワついた走りで力感を欠きました。前を行く相手をゴール後にようやく捉える形で、動き全体にキレが不足していた印象。評価は据え置きとしました。
最終追いでは勝負根性を引き出す内容。期待どおり闘志は見せましたが、迫る相手を凌ぐのに苦戦し、手前を替えながら何とか凌ぎ切る形。良い頃のような俊敏さまでは戻っていません。
動きの質そのものは悪くありませんが、全体的に切れ味を欠き、やや重さを感じる仕上がりです。
ミュージアムマイル 56.0 【B】
最終追いは坂路で併せ馬。格下相手にアタマ差遅れましたが、この馬はいつもこう。1週前にやや緩く感じられた馬体は、ここへ来てしっかり引き締まってきました。
評価すべきは1週前の動き。栗東CWで外の相手を馬なりのまま難なく捕えると、鞍上の軽い仕掛けに即座に反応し、間髪入れず突き放す好内容。3歳馬とは思えない完成度の高さを見せました。
従順さがこの馬の持ち味で、春と比べて落ち着きも増しています。さらに枠の並びも良く、最後の直線では自然と良いポジションが取れていそう。勝負どころでC.デムーロ騎手の合図にスムーズに反応し、一気に突き抜けるイメージが浮かびます。
それにしても、この馬が5〜6番人気とは意外。個人的には1〜2番人気でも不思議ではない実力だと思います。
エコロヴァルツ 58.0 【B】
クビの角度は良く、スムーズに加速できていますが、重心が前後に揺れており、バランス面ではもう一歩といった印象。1週前にしてはやや負荷が足りず、その点も少し気になりました。
最終追いはさらに軽めの内容でしたが、リラックスして伸びやかに走れており、既に仕上がっていると見るのが妥当でしょう。
特筆すべき変化こそありませんが、悪い点もなく安定した状態を維持。評価は据え置きとしました。
シランケド 56.0 【B-】
1週前は手前が決めきれず、全体的に中途半端な内容。鞍上とのコンタクトもうまく噛み合わず、終いは馬の気分に任せたような走りで動きも小さめ。覇気を感じない内容でした。
最終追いは軽めの調整にとどまり、状態を大きく上げてきた印象はありません。
全体的にトーンが上がらず、今回は静観が妥当と見ます。
セイウンハーデス 58.0 【B】
1週前はコースで一杯に追って、馬なりの相手に届かず1馬身遅れ。見栄えこそ悪かったものの、時計は出ており負荷はしっかりとかかっています。
最終追いの坂路では、左手前の際にアタマの位置がやや不安定でしたが、右手前に替わると重心が安定。右手前を長く使う府中の舞台は合いそうです。
この馬の最大の魅力は、前肢をムチのようにしならせ、地面を叩きつけながら走る豪快なフットワーク。6歳馬ですが、晩成タイプらしくここに来ての充実ぶりが目を引きます。
メイショウタバル 58.0 【B】
1週前は栗東CWで単走追い。めい一杯に追ってどこまで粘れるかという内容で、逃げ馬らしい気迫が伝わる走りでした。アタマの高さはいつものことで、この馬にはそれを補って余りある「強靭な脚力」と「前への推進力」があります。
最終追いは輸送を控えたため、CWをサラッと流す軽めの調整。手前を替えることなく右手前一本での走りでしたが、それでも楽々と終い1Fを11.1秒でまとめており、脚力の高さは健在。府中2000mの大外枠は割引き材料ながら、初角でスムーズにハナを奪えれば、逃げ残る可能性は十分にありそうです。
クイーンズウォーク 56.0 【B-】
最終追いでは中内田調教師自らが騎乗。ロードデルレイの回避により、陣営の期待は本馬に集まっています。川田騎手が跨った1週前よりも伸びやかさは増したものの、依然として走りの力感は物足りない印象です。
14頭立てとはいえ、府中2000mでの大外枠も割引き材料。川田騎手をもってしても、ポジション取りを含め難しい立ち回りが求められそうです。
追い切り評価(まとめ)
B評価馬の評価順を知りたくなる方もいるかと思いますが、読者のみなさまに判断を委ねたいと思います。なお、私の評価順は記事の熱量で判断して頂けますと幸いです。ただ私のB評価(1番手)は、ミュージアムマイルです。
| 枠番 | 馬番 | 馬名 | 性齢 | 斤量 | 騎手 | 最終 | 1週前 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 1 | コスモキュランダ | 牡4 | 58.0 | 津村 | B | B |
| 2 | 2 | アーバンシック | 牡4 | 58.0 | プーシャ | B+ | B |
| 3 | 3 | ジャスティンパレス | 牡6 | 58.0 | 団野 | B- | B |
| 3 | 4 | ソールオリエンス | 牡5 | 56.0 | 丹内 | B | B- |
| 4 | 5 | タスティエーラ | 牡5 | 58.0 | レーン | C | C |
| 4 | 6 | ブレイディヴェーグ | 牝5 | 56.0 | 戸崎 | A | A |
| 5 | 7 | マスカレードボール | 牡3 | 56.0 | ルメール | B- | B |
| 5 | 8 | ホウオウビスケッツ | 牡5 | 58.0 | 岩田康 | B- | B |
| 6 | 9 | ミュージアムマイル | 牡3 | 56.0 | C.デム | B | B+ |
| 6 | 10 | エコロヴァルツ | 牡4 | 58.0 | 三浦 | B | B- |
| 7 | 11 | シランケド | 牝5 | 56.0 | 横山武 | B- | C |
| 7 | 12 | セイウンハーデス | 牡6 | 58.0 | 菅原 | B | B |
| 8 | 13 | メイショウタバル | 牡4 | 58.0 | 武豊 | B | B+ |
| 8 | 14 | クイーンズウォーク | 牝4 | 56.0 | 川田 | B- | B |
今週開催のその他重賞レース
ファンタジーステークス(G3)

